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この夕陽に想いを馳せて【美影神羅】③
2016-12-19 22:57:27
「うんうん、これなら死ねそう」

–––––ある日の仕事帰り。
隣を歩いていた不動を欺き、近くの廃ビルに踏み入った。

長い螺旋階段を上って、錆びた扉を開けると途端に風が吹いた。
ブワッ、と勢いよく美影に襲いかかる。
もう、と思わず片腕で目元を隠した。

風に紛れていた枯葉が髪についているのに気付き、鬱陶しそうに取って捨てた。

「それじゃあ、気を取り直して––––––」

死ねるかも〜♪と浮かれながら、フェンスを超える。
次は軽く風が吹いた。さっきまでは鬱陶しい存在でしかなかったが、今ではそれさえもが心地いい。
目を瞑って、体を前方に倒す。

ゆっくり、ゆっくりと体は下へ下へと沈み行く。

(この息苦しい世界から、醒めさせておくれ……)


「駄目だよ」


声が聞こえた。聞いた事のある声。だけれど、誰なのか思い出せない。

「…な、」

その時には既に、影が地面から伸び、自分を支えていた。


・・・パート④へ続く